卒業生の声 古屋 荘一さん
Graduate's Voice
料理はチームワークで決まります。
良い料理人を目指すならコミュニケーション力を鍛えること。
ルカンケ
古屋 荘一さん
調理師本科卒業(1994年3月)
1975年、東京生まれ。2000年、服部栄養専門学校調理師本科(昼)を卒業。新宿の京王プラザホテルや広尾「アラジン」、八王子「モンモランシー」などを経て、26歳で渡仏。パリの「ル・クロ・ド・グルメ」「ルカ・カルトン」、などで修行をする。帰国後「ビストロ・ド・ラ・シテ」のシェフを5年務め、2009年11月に「ルカンケ」をオープン。「ミシュランガイド2021」にて7年連続で1つ星を獲得。
やるしかない、乗り越えるしかない。苦しい経験が自分を変えました。
幼い頃、父に連れていってもらったフランス料理への感動から、将来はフランス料理人になりたいという夢を抱き始めました。東京で一番の料理学校に入ろうと選んだのが服部栄養専門学校です。フランス料理の先生がすごくかっこよかったことや、研修で訪れたイギリスやフランスに大きな衝撃を受けたことで、ますます夢中になりました。
しかし社会に出てから一転、苦しい修行時代が続きます。最初の就職先では「同僚が全員フランス帰り」という孤独感、劣等感との闘い。26歳からのフランス修行ではフランス人に混ざって競争の世界。言葉の壁に負けず何とか仕事で認めてもらえるよう、やるしかない、乗り越えるしかないと前へ進み続けました。当時は苦しい日々でしたが、そのころの経験があるからこそ今があります。どんな苦境でも行動すれば何かが変わると前向きに取り組むことができているのは、若い頃のそんな経験のおかげです。
修行中は一人でがんばるのではなく、先輩上司とたくさん話すこと。
料理というのは一人でやるものではありません。仕入れ・保存・調理を確実な方法で行い、いつでも安定した品質で提供できるのがプロ。チームワークがとても大切です。腕を上げるためにひたすら黙々と努力することも大事ですが、人との会話がなければその努力の方向が正解から離れていってしまう危険性もあります。わからなければ尋ねる、意見を求める、理解できたら実行する、うまくいったことへ感謝する。こんなやりとりの繰り返しで、チーム間に信頼関係が育っていきます。自分の技術が向上するのはもちろん、チームの連携も良くなり、結果的に最高の料理を生み出すことに繋がるのです。
お客様は、食事の材料にお金を出しているのではなく、料理する「人」へ支払ってくださっています。だから若いうちは、先生や先輩、社会に出たら先輩や上司とたくさん会話をし、コミュニケーション力を磨いて人間として成長することが、料理人としての成功の近道だと私は思います。