卒業生の声 松本 美佐さん

Graduate's Voice

私の教室は、お菓子作りを通じて食べ物や環境について考え、体験ができる、
”食育” お菓子教室です。

横浜ミサリングファクトリー
松本 美佐さん

調理師科卒(1983年3月)

約7年前に、お菓子教室&食育コミュニティ「キッチンスタジオ 横浜ミサリングファクトリー」を開業。今年2月には著書「小さなパティシエのためのお菓子ブック」(学校図書、一部一般にも販売)を発売予定。自治体や企業とも協力し、お菓子教室を通じて子供たちのための食育を積極的に行っている。

服部の調理師科を選んだ理由

私の通っていた高校は、周りの友人は、大学に進学するのが当たり前といった環境でした。そんな中、自分はみんなとは違う道を行きたい、手に職をつけたいと思い、子供の頃から好きだった製菓を学ぼうと決めました。

どうせ行くなら名前の通った学校がいいと思っていたので、当時から有名だった服部を選びました。服部は歴史のある学校なので、ベースがしっかりしているといった安心感もありました。卒業してからは、服部出身ということが業界での信用となり、何度も助けられました。これまで先輩や先生方が積み上げてきた実績なのだと感謝しています。服部への入学は、説明会にも参加せず直感で決めたのですが、この学校を選んで間違いはなかったと思います。

服部のよいところ

公衆衛生、栄養学など「食」全体に関わることを、体系的に学べたことです。専門家とオタクの違いは、体系立てて学んだか、好きなことだけを掘り下げて学んだかの違いだ、と聞いて「面白いな」と思ったことがあります。食の仕事は多岐にわたりますが、まずは全体的なことを学び、基盤をしっかりさせることが大切だと思います。

ただ技術を磨くだけではなく、調理する者の心構えや意識の持ち方を、学生のうちに身に付けられたこともよかったと思います。今でも心に残っているのは、学生時代の「鍋磨き」です。当時は、自分では十分綺麗にしたと思って先生に見せても「まだまだ足りない。」と言われ、何度もやり直したものです。この時、中途半端ではなく、徹底的にすることの大切さを教わりました。

仕事をするようになって、こうしたことが、後々大きな差になると実感しています。そのため、教室の子供たちには、調理全体のことを総合的に学ぶ学校をすすめています。お菓子作りが好きな子は、もうそれしかやりたくない!となりがちですが、そんな狭い世界で生きてはだめよ、と伝えています。子供たちには、幅広い知見を持って社会に出ていってほしいと思います。

現在のお仕事について

園児から高校生までを対象にした、子供向けクラスが中心のお菓子教室を開いています。
ただお菓子を作るだけではなく、この教室を通じてたくさんの人と触れ合い、色々なことを経験してもらいたいと考えています。今の子供たちは、目の前にある料理がどんな食材から作られているのかを知らなかったり、庖丁を持ったことがなかったりと、食に対する意識や経験値がとても低いと感じます。

まずは、何でも自分でやってみること。布巾を絞る、テーブルを拭く、卵を割る、後片付けをする。大人は必要以上に手出しせず、自分でできるという達成感を味わってほしいと思っています。市やレストランの協力を得て、収穫体験や市場見学、スクールカフェ(子供が企画•運営するカフェ)などのイベントも積極的に行っています。鎌倉の極楽寺で食道(じきどう)という修業体験をしたり、最近では、視察に来たアフリカの女性起業家の方々と、日本のおまんじゅう作りを体験する交流も行いました。

今のお仕事に至った経緯

卒業後は食品メーカーに勤務し、商品開発の仕事に携わっていました。その後、数社で経験を積みましたが、出産を機に退社しました。子育て中に、もともと興味のあったコンピューター関連の仕事についたのですが、やはり人と接する食の仕事がやりたくて、お菓子教室を開業しました。女性は子育てが始まると、それまでの勤務スタイルで働くことが困難になります。好きなことを仕事にできるお菓子教室の開業は、自分らしく働ける最良の選択でした。今後の目標のひとつは、こうした自分の経験を生かし、教室の開業を望む女性たちを積極的に支援していくことです。

子供たちに望むこと

お菓子は、家族や友達に作ってあげたり、ちょっとした贈り物に最適です。自分の手作りのお菓子をプレゼントして、大切な誰かを喜ばせてほしいと思います。

人を喜ばせることは非常に大切で、こうした経験が、子供たちの生きる力に繋がっていくと考えています。

そして、大好きなお菓子作りをきっかけに、食べ物全般に対しても興味も持ってもらい、素材について学んだり、料理とはどのようなものなのか、どのように作られていくのかを考えるきっかけにしてほしいと思います。コンビニで水やジュースを買うのではなく、米や野菜を買って自分で料理すれば、もっと満足できるんだってことを知ってほしいのです。
この教室での様々な経験を通して、それぞれの心に響く何かを見つけてほしいと願っています。

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