服部幸應服部幸應校長先生カラー一昨年(2012年)の7月にオリンピックの招致委員としてオリンピック競技、まっただ中のイギリス・ロンドンに出かけました。私のミッションは、IOC(国際オリンピック委員会)の委員の方々を招待するJOC(日本オリンピック委員会)による招待交流会を準備し、成功させることでした。我々は接待のために追われていて、競技を見学する時間はまったくありませんでした。この時は銀座のすし店「久兵衛」と麻布のそば店「更科堀井」に協力を依頼し、接待の準備に駆けずりまわりました。

 

いよいよ当日です。会場には250人もの各国委員がやって来ました。IOCのロゲ会長が「久兵衛」を見つけて「QU-BE !! 一週間前にあなたの店に行ったよ! 銀座でいつも行くのがこの店だよ」とほかの国の委員に紹介してくれていました。もちろん「更科堀井」の海老の天ぷらそばも大好評で、JOCによるIOCのおもてなし会は大いに盛り上がり、そして大成功に終わったのです。その後、昨年9月8日に東京五輪の開催が決定しました。一年半前のすしとそばのおもてなしが功を奏したのではないかと、内心、自画自賛しています。

 

さて、6年後にオリンピックが東京にやってきます。選手の方々やスタッフ、何万人もの観客が来日することに、今やホテルはどんな料理を用意すべきか頭を痛めていることでしょう。1964年の東京オリンピック時には、帝国ホテルなどが中心となって選手村での海外メニューを提供しました。しかし50年前と違い、もっと幅広く本格的な献立を各国に合わせて用意する必要が出てきます。欧米各国の食は日本の料理人の得意とするところでしょう。もちろん、中華、ロシア、日本料理しかりです。

 

今、ホテルやレストランが最も苦労させられる料理はアラブ料理でしょう。ハラール食品は、アラビア語で「許可された」または「認められた」といった意味を持ち、「イスラム的な処理を施されているので摂取可能な食品」を指します。イスラムと言えば豚肉食や飲酒が禁止されていることは知られていますが、イスラム圏の肉屋で売られている食肉などはすべてハラール食品なのです。それらの輸入食肉にはハラールであることが証明するシールやマークを付けなければなりません。それが付いていないとムスリム(イスラム教徒)の世界では商品として通用しないのです。つまり、アッラーの神にお祈りをして初めてシールやマークが貼られます。

さあ料理長殿! 年後を目指してアラブ料理の勉強を始めませんか?

 

<2014年9月17日追記>

当学園でも9月15日(月)に第一回ハラール対応調理セミナーを実施。ホテル等宿泊施設・レストランからプレスの方まで120名を超える方々にご参加頂き、改めて食のプロの方々の”おもてなし”に対する意識の高さを感じました。追ってこちらのHPでも報告させて頂きます。

次回の開催についても検討中ですが、決定次第皆様にはご案内いたします。

 

記事提供元:週刊ホテルレストラン 2013年11月4週号  服部幸應の「食」のキーワード vol.26