卒業生の声 松村 雄太さん

Graduate's Voice

高校1年で知ったパスタ作りの楽しさ今も学ぼうというマインドを忘れずに

Aponte
料理長
松村 雄太さん

調理師本科(昼1年)/2003年卒業

松村 雄太さん

1985年、東京都生まれ。2003年、服部栄養専門学校調理師科を卒業。青山のイタリア料理店などで修業をしたのち、イタリアンレストランを展開する株式会社アンティコに入社。「アンティコカフェアルアビス六本木ヒルズ店」を経て、「アポンテ恵比寿」へ。2016年にスーシェフになり、2019年に料理長に就任。現在に至る。ソムリエの資格も持つ。

JR恵比寿駅から歩いて10分ほど。松村雄太さんが料理長を務めるイタリアンレストラン「アポンテ」は、恵比寿ガーデンプレイス近くの落ち着いたエリアにある。女性の一人客も多いという店はカウンターキッチンで、客と料理人との距離が近い。「それだけにお客様に常に見られているという緊張感はあるのですが、お客様の反応を直に見ることができるのは嬉しいし、勉強にもなります」と松村さんは言う。そんな松村さんが料理人を目指そうと考えたのは、高校一年生の時だったという。「それまで料理には全く興味がなかったのですが、たまたまアルバイトで入ったファミリーレストランでパスタを作らせてもらえる機会があり、すっかりハマってしまったんです。なぜか、すごく楽しかった」と松村さんは当時を振り返る。進路もいろいろ考えたが、料理への想いは消えなかった、と松村さん。「それに、ちょっとモテそうかな、と思ったんですよね」と笑う。服部栄養専門学校に進んだのは、いくつか見学した学校のなかでも、先生がイキイキと話していたのが印象的だったから。「体験入学の時に黄金炒飯を作ったんです。中華鍋を振るのは初めての体験でしたけれど、それもすごく面白くて。服部栄養専門学校に入学することを決めました」

服部栄養専門学校で過ごした1年は、あっという間だったという。「料理人になる」という同じ目標を持った同級生達は、今も共通の話題で盛り上がることができる仲間であり、自分を成長させてくれるライバルでもある。「同級生の多くは料理人を続けています。そういう仲間達の消息を聞くと、『あいつも頑張っているんだから、自分も負けられない』と思います。服部栄養専門学校時代に、そういう仲間を作ることができたのが本当によかったな、と思っています」さらに、服部栄養専門学校では1年コースでも、西洋料理、日本料理、中華料理、製菓製パンなど、さまざまなジャンルの料理を勉強することができる。「それは、料理の基本を知るという意味でも、とても勉強になりました。それと、特に若い頃は、まかないを作る時にも役立ちましたね。まかないもイタリア料理オンリーという店もありましたが、どんなジャンルの料理でもよいというところでは、中華料理などを作ると喜んでもらえました」服部栄養専門学校卒業後はいくつかのイタリアンレストランで修業し、14年ほど前に株式会社アンティコに入社。会社のサポートもあり、ソムリエの資格も取得。ソムリエとして働いていたこともあったという。「ソムリエをやっていたのは2年ほどでしたが、この経験は今もとても役に立っています。特にこの店で働くようになってからは、お客様から直接ワインのことを聞かれることも多いんです。そんなときでも、自信を持って料理とワインの組み合わせやそれぞれのワインが持っているストーリーなどをご紹介することができる。それによって説得力も増しますし、お客様により美味しく召し上がっていただくことができると思っています」と松村さんは言う。それに、自分がレストランへ行った時も、ワインリストをしっかり読むことができますしね、と話す。「私自身、食べることが好きでこの仕事をやっているようなものなので。きちんと勉強して、ソムリエの資格を取ることができたのは、よかったと思っています」

カウンターキッチンの現在の店に入った最初の1カ月くらいは、仕事が手につかないくらい緊張していたし、少し怖かった、と松村さんは当時の心境を明かす。「でも、見られていることを意識するから、『いい仕事をしよう』と思うし、それがモチベーションに繋がります。若いスタッフには常々、お客様がオーダーしやすいように、お客様の様子を感じながら仕事をするように言っているのですが、この環境で働いているうちに、そんな気配り、目配りも自然とできるようになるみたいで。お客様ともいい関係を築けるようになっていますね」コロナ禍で休業を余儀なくされていた時期には、若いスタッフにも手伝ってもらい、SNSを始めた。「料理人も、時代に合わせて働き方を変えて行く必要があることを改めて実感しました。コロナ禍はそれを知るよいきっかけになりました」。そして学ぼうとするマインドが何より大切、と松村さんは言葉を続ける。「特に変化が激しい今の時代は、自分からいろいろなことを身につけていこうという気持ちを持ってほしい。若い人達には、自分からインプットできる人になってほしいと思っています」と後輩たちにエールを送る。そんな松村さん率いる「アポンテ」は、予約をして来るような店ではない、と言う。「『イタリアンが食べたいな』と思ったときに気軽に立ち寄ることができるレストラン。仕事帰りに一人でも楽しく食事をすることができるレストラン。アポンテはそんな位置づけのレストランなので、カジュアルで入りやすい雰囲気は常に保っていたいと思っています。レストランですから、美味しい料理を提供するのは当たり前です。そこにプラスアルファ、お客様が気持ちよく過ごすことができる空間を作り上げることが大事だと思っています」と松村さんは姿勢を正す。高校1年生の時にパスタ作りにハマった若者は、それから20年余の時間を経て、ゲストの前でゲストのためにパスタを作るシェフになった。「今もパスタを作るのは好きですよ」と話す松村さんの表情は、どこか晴れやかで楽しそうだった。

※料理王国「2023年12月号」に掲載された記事です。

Aponte

東京都目黒区三田1-12-26

https://www.aponte-ebisu.net

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