卒業生の声 榎本 美沙さん
Graduate's Voice
会社員から料理家へ転身発酵食品の魅力をオンラインも活用し発信
料理家・発酵マイスター
榎本 美沙さん
調理師本科(昼1年)/2017年3月卒業
発酵食品や季節の食材を使ったシンプルなレシピを、雑誌や書籍、テレビなどで提案。YouTubeチャンネル「榎本美沙の季節料理」はチャンネル登録者数30万人を突破。最新刊『榎本美沙の発酵つくりおき』(家の光協会)、その他著書に『からだが喜ぶ発酵あんことおやつ』(主婦と生活社)「ゆる発酵」(オレンジページ)など多数。
週に2回、自宅のキッチンから配信するYouTubeチャンネル「榎本美沙の季節料理」が好評の榎本美沙さん。チャンネル登録者数は実に30万人超。書籍やテレビなどメディアでのレシピ紹介に加え、地方自治体とのコラボレーションも多いという大人気の料理家&発酵マイスターだ。その原点は、大学生の頃に遡る。「両親が共働きだったこともあり、家で料理をするようになったのが、そもそものきっかけでした」と榎本さんは話す。最初は、半ば強制。でも、ウェブや雑誌を見ながら料理を作るようになると、次第にその面白さに目覚めていったという。気がつけば、メールマガジンで一人暮らしの人向けの料理を配信するなどどっぷりハマった。「就職先も、広告代理店なら食品メーカーさんを担当して、料理関連の仕事ができるかもしれないと思い、入社を決めました」
入社から数年が経ち、料理の仕事にしっかりと取り組んでいきたいと思い始めたという榎本さん。「夫に相談したら『学校などでしっかり勉強してみたら』と言われて。そこで、会社を辞めて、服部栄養専門学校で改めて基礎から勉強することにしました」服部栄養専門学校に決めたのは、テレビで何度か服部幸應校長を見たことがあり、信頼できると感じたからだ。最初は、働きながら夜間のコースを受講しようかと考えた。しかし、授業が始まる18時半には席に座っていないと遅刻になってしまう。さらに、遅刻3回で欠席扱いになってしまうので、それは難しいと考えたという。「ほかに、2年コースと1年コースがありましたけれど、その頃私は27歳になっていたので、2年コースでじっくり勉強する余裕はないな、と思い、1年コースで集中して勉強することにしました」自分に足りないものは分かっていたし、ここで得た知識を次に使わなければいけないので先生の話を聞き逃してはいけないと必死だった、と榎本さん。さらに、先生の手元を絶対に忘れてはいけないと思い、調理実習のときには一番前に座って必死にメモをとっていた、と笑う。「実技試験もあるのですが、私は自分が不器用なのは認識していたので、人の2倍練習すればなんとか合格できるかなと思い、家で何度も練習しました。おかげでアジの三枚おろしのときは、夫も毎食アジフライを食べさせられることになりましたし、ダイコンのかつらむきのときは味噌汁の具がダイコンだけという日が続きました」と榎本さんは当時を振り返る。さらに、服部栄養専門学校では和・洋・中・製菓製パンと、さまざまな分野をひと通り学ばなければいけない。自分はイタリア料理のシェフになりたいから洋食だけ学びたい、というわけにはいかないのだ。「でも、逆に私にはそうした服部料理専門学校のカリキュラムがよかったんです。料理家には、料理の分野を問わず、さまざまなお仕事の依頼がきます。今回、お菓子の本を作ったのですが、服部栄養専門学校でスイーツも学んでいるのでベースができている。これは本当にありがたかったです。たとえば、一つの食材で、和食、洋食、中華の3つの料理を作ってくださいとリクエストされても、学校で学んだことをベースにレシピを考えることもできます。また、栄養学や衛生についてなど座学の授業も今の仕事に役立っています」
そんな榎本さんが料理家として独立するタイミングで、ある企業から発酵食品のレシピ開発を頼まれた。「それが1000本ノックのような感じで(苦笑)。味噌や塩麹、甘酒といった発酵食品について、かなり勉強させられました。でも、もともと発酵食品が好きだったこともあり、大変でしたけれど、楽しかったです。発酵食品が皆様に興味を持たれる分野になったこともあり、最近では仕事の80〜90%が発酵食品に関わることですね。発酵食品が豊富な地方へ赴いて講演をさせていただいたり、最近では新商品の開発にも携われるようになりました」2018年10月にはYouTubeチャンネル「榎本美沙の季節料理」の配信をスタート。当時は上から撮影する動画が流行っていたが、榎本さんはそういう映像にはしたくなかった、と話す。「私は、料理は作っている最中の心地よさも楽しさだと思っているので、野菜をトントントンと切っている音や、何かを煮ているグツグツという音が聞こえるような、調理工程自体を肌で感じて心地いいな、と思えるような動画にしたかったんです。なので、上からの映像ではなく、人々の実際の目線に沿うような横からの映像にしたいよね、と動画の撮影を担当してくれている夫とも話して。そういう動画を撮って配信していたら、少しずつ見てくださる方が増えていって、今に至っているという感じです」書籍や雑誌などのメディア、YouTube、InstagramなどのSNSに加え、最近はオンラインで料理教室も開催していると話す榎本さん。「料理教室って、様々な方達のご意見を聞くことができて、楽しいし、勉強にもなるんですよね。」大学時代、図らずも出合ってしまった「料理」というやりたいこと。それはいつしか榎本さんの天職となり、今、活躍の場はさらなる広がりを見せている。
※料理王国「2024年2月号」に掲載された記事です。