卒業生の声 松もと 綾乃さん
Graduate's Voice
いつか人の心を癒せるお店を開きたい30年越しに実現したこだわりのお店
カフェMy Dish
店主
松もと 綾乃さん
調理師本科夜間部(1.5年)/ 2006年9月卒業

2023年に東京都国分寺市から山梨県北杜市へ移住し、カフェ「My Dish」をオープン。米粉のお菓子とグルテンフリーパスタを中心に、なんでもお召し上がりになれる方も、ベジタリアンやヴィーガンの方にもお楽しみいただけるメニューでお客様をお迎えしています。
Q.料理を仕事にしようと思ったのは何がきっかけでしたか?
食の仕事への憧れは20歳くらいからありました。気持ちが固まったのは、短大を卒業して社会人となってからのこと。つらい出来事があり絶望の中にたとき、ふと立ち寄ったお店で「温かく、優しく、心がほわっと楽になったご飯」をいただいたことがきっかけでした。こんなふうに人の心を癒せるご飯を作りたい、いつか自分でお店を開きたいと、長い間夢をあたためてきました。
Q.服部に入学したのは35歳とのこと。どのような経緯で入学されたのですか?
当時勤めていたのは大手派遣会社です。「いつか飲食店を開きたい」とずっと思っていたものの、上司や部下に恵まれ仕事のやりがいもあり給料もよく、居心地が良かったので辞める理由がなかったんですよね。このままだといつまでもやりたいことが始められない・・・と焦りを感じていました。この本音を上司に打ち明け相談したところ、親身になってくださって。驚きながらも「やめるなら2年前には言ってくれ」と応援してくださいました。そして会社員のまま準備を進めることにも理解をいただき、最後の1年間は正社員から契約社員という形にしてもらい、昼は会社員、夜は服部へ通学という生活となりました。試験前には休むことも許可してくれて、職場の皆さんがあたたかく応援してくれたことが本当にありがたかったです。
Q.服部での学び、思い出について聞かせてください。
担任の先生をはじめ、とても親切にご指導いただきました。
社会人ばかりの夜間クラスはみんなやる気に溢れていて、毎日本当に充実していました。技術的なことだけでなく、食への考え方や信念についても大きな学びがありました。「ずっと料理人をしたいんだったら、極端な味ものは食べない方がいい」「農家さんの助けになる食材を使った方がいい」といった先生方の教えは、今の自分の仕事のあり方に直結しています。
私は成績良い方だったので、在学中のコンクールで賞をいただいたこともあったんですよ。そのときにいただいた賞品のお鍋は今でも使っています。服部卒業という経歴がお客様に安心感を与えることもあり、服部で学んで良かったと誇りに思います。
Q.服部卒業から現在のお店オープンまでの経緯をお聞かせください。
卒業後、さまざまな職場で経験を積みました。飲食店のパートやシェアキッチンなど、7〜8年ほどさまざまな飲食に携わってましたね。卒業してすぐにアルバイトしたのは和食のなだ万。その味がとても好きだったので入社したのですが、厳しい職場で同期がみんなやめてしまって。自分も忙しすぎて体調を崩し、飲食の仕事の厳しさを身をもって体験しました。
飲食で経験を積みながら、「そのうち夫が定年退職してから開業しようかな」と気長に考えていたのですが、そんなときにコロナ禍で生活が一変しました。夫も私もリモートワークが増え、息子は中学受験勉強で毎日塾通い。私はZOOMでパン作りレッスンをするようになり、これなら今移住してもいいかも?と考えるようになり、息子が中学にあがるタイミングで山梨に移住することに決めました。
こうして2023年、東京都国分寺市から家族で移住し、30年来の夢だった「カフェMy Dish」をオープンさせました。
Q.「カフェMy Dish」の強みは何ですか?
お店では食事制限がある方も召し上がれる食事・スイーツを提供しています。これは、乳がんを持っている友人に出会ったとこで、「グルテンフリー」「ヴィーガン」「アレルギー」など食事制限のある方が多くいることを知ったからです。何でも食べられる方も食べるものに制限がある方も、ベジタリアンやヴィーガンの方も、「同じ美味しい」を共有してもらえるのが、My Dishの特徴。このコンセプトを支持する方が、遠方からも訪れてくださっています。
八ヶ岳の自然とともに、心も体も満たされる時間を提供したい、何よりお客様の「美味しい!」という笑顔が見たいという一心で、料理を作り続けています。
Q.大変だと思うとき、やりがいを感じるときは?
月変わりの「季節のパスタ」の開発です。二十四節気を意識し、できるだけ意外性のある素材で作っています。たとえば夏にはスイカのパスタ、秋にはゆずポン酢とわさびとか。季節を感じながら感動するような料理にしたくて毎月試行錯誤しています。なんとなくイメージがあってその味になるために作り続けるのですが、なかなかイメージ通りに味が決まらないときは大変。何度も夫に試食してもらって完成形に近づけています。
お店はオープンキッチンになっていてお客様のお顔が見えるようになっているので、苦労の末に出来上がったお料理をお客様が召し上がって「美味しい!」と笑顔を見せてくださるとき、心から喜びを感じます。
Q.目標や夢についてお聞かせください。
テラス席増設のため、現在クラウドファンディングでプロジェクトを進めています。
実はカフェをオープンする際にペット可のテラス席の設置を予定していたのですが、コロナ禍のウッドショックによる資材の価格高騰で断念せざるをえなかったのです。しかしペットを飼っている方々をはじめ、多数のお客様からのご要望のため、実現に向けて協力を呼びかけているところです。
自分・家族・地域の方・ご旅行の方、皆さまが「ゆったりとした癒される時間」「誰かと楽しくお話しする時間」「ペットとお友達と情報を共有する時間」、それぞれの「時間」を楽しく過ごしていただけるような場所になっていけたらと思っています。
そしてゆくゆくは社会貢献の場になることを目標としています。お店、通販、レッスン、ふるさと納税などで利益が出て潤ったら、それをさまざまな人に還元していきたい。憩いのカフェとしてだけでなく、こども食堂や障がい者の方、高齢者の方の就労支援としての役割でお役にたてたら最高ですね。
Q.これから料理を志す学生に対してメッセージをお願いします。
私は「食べた人が幸せを感じる」料理人になりたくて、35歳で会社勤めを辞めて服部で学び、37歳で飲食業界に入りました。さまざまな仕事を経験し人々と出会ってきたことで、やりたいお店が明確になっていきました。
服部に入学を考えている皆さんは、私のように夢や希望を持っている人だと思います。お仕事しながらの勉強は大変ですが、とにかく健康第一に考えてください。自分が健康でさえいれば、美味しいものが作れて人々の笑顔にも出会えます。調子が悪いとき、私はクッキーを焼かないようにしています。健康状態は料理に出るからです。まずは健康を大切にし、ハッピーな気持ちで料理に向き合い夢を実現していってください。応援しています!
※参照文献(インタビューの会話以外の内容は以下から参照しました)
- CAMPFIRE
- https://camp-fire.jp/projects/874612/view
- My Dish ホームページ
- https://mydish.jp/





